No.5「長期にわたる日本のエネルギー政策の策定」

2012年3月26日 森下直路・網屋慎哉

.この課題を取り上げた理由とねらい
 日本のエネルギー政策は温室ガスの削減と自給率の向上という観点から、原子力への依存度を高める様な方針であったが、今回の福島原発の問題により、その見直しと変更が必要になってきた。そこで我々は改めて長期にわたるエネルギー政策を技術的にも、政治的にも実行可能な案として取りまとめ提言していく。

2.プロジェクトメンバー 
高瀬昭三、河村隆宏、石川演慶、田村博、伴靖雄、高石武夫、安部忠彦、武井敏一、網屋慎哉、石原幸正、森下直路(リーダー)

3.実施経過
 9月16日にbT・6合同の会議を持ち、活発な意見交換後、次回会合として、地熱発電について子安氏から話を御伺う会を持つことにした。
 10月28日子安英二氏を迎え、地熱発電についてお話を伺った。子安氏の長年の地熱発電へのかかわりから、世界の現状まで、懇切丁寧なお話があった。また糸魚川から木島氏も来られ、地熱の実際の状況を話された。並行して、アンケートを実施し、メンバーの意見集約を行った。

4.エネルギー政策の基本
 A)    これらの活動の結果、エネルギー政策の基本として
                i.          原子力の今後をどう考えるか。
              ii.          エネルギー自給率の低さにどう対処するか
             iii.          地球温暖化対策をどう進めるか
   の3点に絞った。
 B)   原子力の今後をどう考えるか
 まずこれからの前提条件として、@今回の事故の原因の解明、A地震国である日本に適した原子力発電の検討(現行のものは適しているとは思えない)、B 高放射性廃棄物処理体制の確立(仮に脱原発政策をとっても必要な事項)を行う必要がある。
 原子力発電が安全ではないことがはっきりした以上、もし使い続けるためには十分な事故対策を行う必要がある。単に津波に対応するだけでなく、事故の可能性を想定し、被害を最小限にとどめる対策を考慮するべきである。予備の発電設備の設置、災害対策タンカーの常設などが考えられる。
 前提条件@、Aの結果によっては、原子力の日本における利用は断念せざるを得ないかもしれない。 このような状況下で、バックエンドシステムを伴わない原子炉の海外輸出は論外であろう。
 C)   エネルギー自給率の低さへの対応
 国内の資源が限られている以上、資源外交の確立は必須である。
その上、徹底した省エネルギーの実施である。まずエネルギー機器・システムのエネルギー効率の改善、エネルギー多用産業の見直し(日本国内で行う産業なのかどうか検討する必要がある)、輸送機関においても、単なる輸送機器の省エネルギー化だけでなく、船舶・鉄道などの大量輸送機関の見直し、公共交通システムの見直しなど、システムとしての省エネルギー対策が必要とされよう。
 また、国内資源として、再生可能エネルギーの徹底的な利用も必要である。現行の太陽光発電、風力発電、地熱発電、中小水力発電などを伸ばすためには、それぞれのシステムに対する既存の規制を見直す必要がある。更に再生可能エネルギーにはまだまだ未開発の夢のあるエネルギーも多い。特に海洋関連は無限の宝庫である。洋上発電、メタン・ハイドレート、更には海底熱水利用による発電などが考えられる。特に海底熱水は、伊豆小笠原諸島付近の東日本海丘、沖縄トラフ付近の西日本海丘などが有望で、この付近に人工島をTPS方式で設置し、発電を行い、その電力でもって海水を分解し、塩素を発生させずに水素を作り、陸上で回収した二酸化炭素と反応させ、メタンに変成し、エネルギー源として利用することが考えられる。再生可能エネルギーは既存の技術のみならず新しい技術開発の大きな宝庫である。今考えられているような補助的なものでなく、日本のエネルギーの将来を担う技術開発を期待したい。
 D)   地球温暖化対策について
 従来地球温暖化対策の担い手としては、化石燃料を使わない原子力の活用が主に考えられていた。しかし、現状では原子力の活用は考えられない。原子力に代わり、今使われている化石燃料は、二酸化炭素の最有力発生源であることはいうまでもない。
 この問題に対しても、対応策としては@省エネルギーであり、A再生可能エネルギーの活用である。
 省エネルギーはエネルギー源の使用量を減らすことであるから、自ずと二酸化炭素の発生はおさえられる。また、機器のエネルギー効率改善も、例えば同じ発電量を得るのに少ないエネルギー源で済むということだから、これも二酸化炭素削減に有効である(頭ごなしに、石炭の使用をやめるのではなく、その熱効率を高めれば、使用量が減るということである。この機器の高効率化に関する日本の技術開発は世界の先端を切っている)。
 再生可能エネルギーは、木質材料・生物残差を除き、発電現場で二酸化炭素が発生する可能性は低い。これも地球温暖化へ大きく寄与する技術である。
 E)   エネルギー教育の徹底
 例えば電気はスイッチをひねればすぐ使える便利なエネルギーである。火に比べても、火災の可能性も低いし、めったに怪我をすることもない。ということで、電気オールマイティの時代だが、よく考えてほしい。電気のエネルギーはその元である燃料のエネルギーの半分にしかならない。残りは発電の際に失われているのである。特に熱源として電気を利用するのは、大きな無駄遣いと云えよう。
 エネルギーとは何なのか。どんなことができるのか。エネルギーの種類、その特徴、その有効な利用法など、きちっと理解して利用する必要がある。そうすれば、例えば太陽光、太陽熱も単に発電、発電と騒ぐだけでなく、もっと有効に使うことを考えるべきだろう。
 まず子供に理解させ、国民の常識にしていく必要がある。

5.今後の展開
 ここに纏めた基本策を小論文にまとめ、関係各界に配布して、関心を広げていきたい。

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